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東京地方裁判所 昭和41年(ワ)11525号 判決 1967年7月18日

原告 八千代工業株式会社

右訴訟代理人弁護士 下山四郎

被告 公和商事株式会社

被告 一公不動産株式会社

被告 小島義男

被告等訴訟代理人弁護士 木村浜雄

同 柏原晃一

主文

一  被告等はそれぞれ原告に対し、原告が小林均との間において別紙物件目録第一記載の各土地につき東京地方法務局板橋出張所昭和三九年一月八日受付第二八一号の所有権移転仮登記および同出張所昭和四一年一〇月一八日受付第四二〇六二号の右仮登記の附記登記に基づく本登記手続をすることを承諾せよ。

二  被告等はそれぞれ原告に対し、原告が小林工業株式会社との間において別紙物件目録第二記載の建物につき東京地方法務局昭和三九年一一月二八日受付第四三九三四号の所有権移転仮登記および同出張所昭和四一年一〇月一八日受付第四二〇六四号の右仮登記の附記登記に基づく本登記手続をすることを承諾せよ。

三  訴訟費用は被告らの負担とする

事実

<全部省略>

理由

本件土地および建物につき、請求原因記載の各登記があることは当事者間に争がない。

そして証人高林由雄の証言および官署作成部分の成立については当事者間に争いがなくその余の部分については同証人の証言によって成立を認め得る甲第一号証ならびに成立に争のない甲第二号証の一ないし三によれば請求原因第一項(イ)、(ハ)および第二項記載の事実が認められ、また、同証言、原告代表者尋問の結果および成立に争のない甲第四号証、第六号証、第七号証の二、三、同証言により成立を認め得る甲第五号証の一ないし三、官署作成部分の成立については争がなくその余の部分については同証言によって成立を認め得る甲第七号証の一によれば、同第三項記載の事実が認められ、さらに、原告代表者尋問の結果および官署作成部分の成立については争がなくその余の部分については同尋問の結果によって成立を認め得る甲第八、第九号証の各一、ならびに成立に争のない甲第八、第九号証の各二、三により同第四項記載の事実が認められる(但し、いずれも前記争のない部分を除く)。

右のうち、相互銀行取引約定の債務者を小林均から小林工業株式会社に変更したのは契約の更改であり、かつその際、根抵当権の変更契約により従来の債務についての根抵当権を新債務の担保として移転したものであるから、債務の不履行の場合における代物弁済の予約完結権も同時に新債務の担保として移転したものと解される。

ところで右根抵当権の被担保債権たるべきものは、前示認定による、昭和三八年一二月一七日付小林均と平和相互銀行間の継続的手形取引契約、同貸金契約、同相互掛金契約にもとづく債権であるが、原告が同銀行より譲受けた請求原因第三項記載の債権がこれにあたるかどうかについて判断する。

前掲証言および前掲甲第一号証、第二号証の一ないし三、ならびに同証言によって成立を認め得る甲第三号証の一、二によれば次の事実が認められる。すなわち、平和相互銀行は、従来、取引先と継続的手形取引契約、同貸金契約、同相互掛金契約等を締結するに当っては、それぞれ各別の基本契約を結び、これにもとづき個々の取引契約をしていたので、小林との間においても請求原因第一項記載の各基本契約を結び右基本契約から生ずる債権をもって右根抵当権の被担保債権とした。ところが昭和三九年頃、相互銀行協会が統一の基本約定書(相互銀行取引約定書)の書式を作成したので、同銀行も従来の継続的諸基本契約書をこれに統一することとし、小林からも新たに相互銀行取引約定書を差入れた。しかし右約定書は、両者間の従来の継続的諸基本契約書を一つの契約書に整理しまとめたもので、それ迄の継続的手形取引契約、同貸金契約、同相互掛金契約を包含する基本契約書である。

以上のとおり認められ、右認定に反する証拠はない。そして前記のとおり、小林均と平和相互銀行取引契約が、債務者を小林工業株式会社とする契約に更改され、その際、本件根抵当権も新債務に移転された(同時に抵当物件に対する代物弁済予約完結権も移転した)ものであるところ前掲甲第四号証、甲第五号証の一ないし三および甲第七号証の一によれば、原告が譲受けた前記債権は、いずれも右小林株式会社と平和相互銀行間の相互銀行取引約定に包含された継続的相互掛金契約ならびに同手形取引契約にもとづくものであることが認められるから、本件根抵当権の被担保債権に属するものであることは明らかである。

してみれば、右根抵当権債務の不履行を理由に同債権の譲受人たる原告が本件土地および建物につき代物弁済の予約完結の意思表示をしたことによりその所有権は原告に移転したものというべきであるから、原告は、主文第一項および第二項掲記の仮登記および附記登記にもとづく本登記手続をする権利を有し、従って右仮登記の後順位にある各登記の権利者たる被告等に右本登記手続をするにつき承諾を求めるのはもとより正当である。<以下省略>。

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